ハイスピードカメラ:レールに接触した先球を、先球ファーストからでも、クッションファーストからでも入れる映像

レールに接触した先球をポケットする際、手球は先ず先球に当てないといけないでしょうか?それとも先ずクッションに当てるものでしょうか?ハイスピードカメラでとらえた瞬間を解析してみると?

結論

手玉を先に先球に当てても、もしくは、先にクッションに当てても、ポケットは可能。

撞き方次第であり、前者は先球に対して順ひねりを。後者は手球の自然回転で対応可能であり、一般的に思われているように、必ずしも引っ掛ける(=先球に対して逆ひねり、つまりクッションに対して順ひねりで、クッションファーストで狙う)必要はない。

詳細

レールに接触した先球を狙う際、慎重になりますよね?

ちょっとでも厚みを間違うと、手球が先球に当たり、先球がクッションに入り、ポケットに向かわず外れることはよくあると思います。

いったいどうすれば、効果的にクッションに接触した先球をポケット出来るでしょうか?

DrDaveBilliardsチャンネルに分かりやすい動画がありました。ハイスピードカメラ(1000フレーム/秒 = 0.001秒に1コマ)で撮影しているので、先球ファーストとクッションファーストの際の手球が先球に当たる瞬間、手球のクッションへの入り具合、手球と先球の回転や、手球と先球の走り具合などが、如実に分かります。

それでは早速見てみましょう!より詳細に見たい方は、youtubeの再生速度を遅くしてみてください。

レールに接触した先球に対して、手球を先に先球に当てて、ポケットを狙いにいく映像

Ref) Youtube, Dr. Dave Alciatore, HSV A.128 – rail cut-shot hitting the ball first with OE

<分析>

ショット条件 比較的早いキュースピード (時速 約11 km/h) で順下ひねりでショット。 手球を先に先球に当てて、ポケットを狙いにいく。

手球が先球に接触してから、手球がクッションに接触するまでの時間0.001秒。先球ファーストといっても、ほぼクッションタッチと同時と考えてよい。先球がクッションに接触してるので、同時接触というのは、当たり前といえば当たり前ですね^^

手球の動き:斜め50度から侵入した手球が先球と接触した後、手球は約0.01秒クッションに沈み、手球がクッションから離れた後は、手球は後方約65度方向に進んだ (時速 5.8 km/h)(ほぼ50度方向で入射し、ほぼ65度後方に反射)

先球の動き:手球と接触後、先球はレールに沿って、およそ進行方向に回転を始めながら進んだ (時速 7.7 km/h)。わずかに先球の横方向の回転が見られるが、これは手球のサイドスピン (この場合、先球に対して順ひねり)が先球に歯車のように伝わったことによると思える(先球がクッションと噛んで回転する方向と同じ方向に回転)。手球のサイドスピンが先球に伝わったことで、先球の転がりが安定した走りを見せていると推測される(記事:先玉の動きを安定させる方法参照)。また興味深いことに、手球が先球にしっかりとヒットしているにもかかわらず、先球がクッションに沈まないのは、順ひねりでスローを相殺しているからと考えられるもしスローを相殺していないと、先球はクッションに沈んでしまうので、その反動で先球はクッションから跳ね返り、レール際から離れていき、結果、ポケット出来なくなると考えられる。

実践対策: 比較的早いキュースピード(時速 約11 km/h)で順下ひねりでショット し、先球ファーストで狙いたい場合、実質には、先球とクッションに同時に手球が入るように撞くこと。そして、スローを相殺する為、順ひねりを忘れずに入れておくこと

続いて、 レールに接触した先球に対して、手球を先ずレールに入れて、ポケットを狙いにいく映像

Ref) Youtube, Dr. Dave Alciatore, HSV A.132 – rail cut-shot, rail first, with English

<分析>

ショット条件: 手球を自然回転 (時速 約8.5 km/h) で走らせてショット。手球を先ずレールに入れて、ポケットを狙いにいく。ここで自然回転とは、ひねりを使わず、撞点は手球の中心より上で、比較的普通のキュースピードで手球を撞いて、手球が自然とラシャ上を転がる状態(=手球の回転がラシャ上で空回りしない状態)。例えば、バンキングの撞き方が自然回転。ドローショットや、ストップショット(無回転ショット)、強めのフォローショット(=撞いた瞬間、手球が微小にジャンプしたり、手球の回転がありすぎて、ラシャ上で空回りする状態)は自然回転ではない。

手球がクッションに接触してから、先球に接触するまでの時間0.009秒。 思ったよりも先球から少し離れた位置のクッション(手球と先球の距離は8mm空いている)に手球を入れてから、手球がクッションから跳ね返ってくる際に、先球のポケットを狙った(=跳ね返りを狙うので、このくらいの距離位を先球から確保して手球をクッションに入れているのでしょう)。

手球の動き:斜め50度から入射した手球は、まずクッションに接触し沈み込んだ後、クッションがへこんだ状態で、0.002秒ほど(=3.5mmほど)クッションを横滑りし、その後、クッションからの反射で手球が出てくる際に、手球は先球にほぼ正味の厚み(ポケット方向に100%の厚み)で当たった。その後、手球はクッションと垂直方向に進んだ (時速 5.0 km/h) 。これは90度分離の法則で、先球がポケットに向かってまっすぐ進んだため、手球はそれと90度方向=クッションと垂直に進んだことと理解できる。またこの現象から、手球が自然回転でクッション、続いて先球に接触すると、手球が先球に当たった際、手球に特にサイドスピンが生じてなかったことを意味する(もし手球にサイドスピンが生じていたら、手球の動きは90度分離とならず、クッションから前方か後方に進んだはず。そもそも手球は自然回転なので、手球にサイドスピンが入ってないことからも理解できる)。

先球の動き:手球と接触後、先球はレールに沿って、無回転で進んだ(少なくとも動画で確認できる0.07秒間、時速 5.0 km/h。これ以降はごくわずかに進行方向に回転を始めている)。またわずかに先球の横方向の回転が見られるが(先球がクッションと噛んで回転する方向と逆方向に回転)、これはおそらく、手玉からのスピン伝達がないことと、 手球がほぼスタンショット状態(無回転)で先球に当たったため(youtube設定をスロー再生にすれば分りやすい)、先球の動きが不安定な回転を始めたと思える(記事:先玉の動きを安定させる方法参照)。またおそらくだが、手球と先球が接触した際に生じるスローの効果により、先球がポケットに向かって走る際、先球は手球の進行方向(=手球がクッションから垂直に離れていく方向)のスローを受けて、レールからわずかに離れるように進む可能性があるが、本動画での確認は難しい(動画の最後で気持ちそうなっているようにも見える?!^^)。このように先球の動きが不安定である場合、ポケットに嫌われるリスクが上がると考えられる。

実践対策自然回転 (時速 約8.5 km/h) で、クッションファーストで狙いたい場合、手球と先球が接触する位置から8mm程離れた位置のクッションに手球をいれることは目安の一つ(但し手球の入射角が50度位の時)。ショットが成功した場合、 手球は先球にスタンショットで接触し、手球はクッションと垂直方向に反射する。先球は無回転でポケットに向かう為、先球の動きが不安定になる可能性があることに注意。 ただしこれらはクッションの反発力次第で変わるはずなので一つの基準として考えるのが良い

続いては、レールに接触した先球に対して、極わずかだが先に手玉をクッションに入れてポケットを狙いにいく映像

Ref) Youtube, Dr. Dave Alciatore, HSV A.141 – rail cut-shot, rail first (barely), with English

<分析>

ショット条件: 手球は比較的スロースピード (時速 約5 km/h) で自然回転でショット。手球がクッションに接触するタイミングと先球に接触するタイミングはほぼ同時だが、わずかに早く先に、手玉をクッションに入れてポケットを狙いにいく 。

手球がクッションに接触してから、先球に接触するまでの時間 0.002秒。クッションファーストといっても、ほぼ先球タッチと同時に近い状況と考えられる。 手球がクッションにへこむ方向に進行中に(手球がクッションから反射する前)、先球に当たってポケットを狙いに行ってることが特徴。

手球の動き:斜め50度から侵入した手球が先球と接触した後、手球は前方約60度方向に進んだ (時速 2.8 km/h)(ほぼ50度方向で入射し、ほぼ60度前方に反射)。

先球の動き:手球と接触後、先球はレールに沿って、始めは無回転で進行し(約0.04秒間) (時速 2.9 km/h) 、その後、進行方向に向かって先球の回転が始まり、同時にわずかに横回転を始めた(横回転方向は先球がクッションと噛んで回転する方向と逆方向に回転)。また先球の安定性は安定とはえない可能性があるが、これは先の自然回転ショットの動画(2番目の動画)と同様に、手玉からのスピン伝達がないことと、スタンショットに近い状態で手球が先球に接触した為と考えるこのように先球の動きが不安定である場合、ポケットに嫌われるリスクが上がると考えられる。 またクッションがへこんでいる際に手球が先球に当たっていることから、実質的には手球は薄目に先球に当たっており、その為、クッションから離れる方向に先球は進行しそうだが、スローの効果(この場合、先球をクッション方向に推し進める力)と相殺して、結果、レールに沿って先球が進んでいったと思える。

実践対策比較的スロースピード (時速 約5 km/h) の自然回転でショットし、わずかにクッションファーストで狙いたい場合、実質には、先球とクッションに同時に手球が入るように撞くこと。 ショットが成功した場合、 手球は前方約60度方向に進む(手球の入射角が50度位の場合)。先球は無回転でポケットに向かう為、先球の動きが不安定になる可能性があることに注意 ただしこれらはクッションの反発力次第で変わるはずなので一つの基準として考えるのが良い

まとめ

クッションに接触している先球というと、とにかく、いわゆる引っ掛け(的玉に対して逆ひねり=クッションに対して順ひねりで、クッションファーストで狙う)を想起してしましますが、今回のように、引っ掛けをせずとも、手球を自然回転させ、クッションファーストで、ポケットを狙えることを選択肢の一つに入れるといいですね!いわゆる引っ掛けだと、手球コントロールに制限がついてくるので、自然回転でも狙えるなら、そのほうがポジショニングのバリエーションが広がると思います。ただしクッションファーストの狙い方は、クッションのコンディション次第なので(テーブルにより異なる)、今回のケースはあくまで目安として考えるといいと思います。

また、クッションファーストで自然回転ショットで狙った場合、手球が先球が当たった後、先球は一時、無回転で進む傾向がある為、先球の安定性はよいとはいえないことを考慮しましょう。ポケットでガタガタしやすいかもしれません。その為、先球の動きを安定化させる目的で、手球に順ひねりを入れて、手球が先球とクッションに同時にヒットするように撞くことがコツと思えます先球がポケットに嫌われなくなる可能性が高まる)。

最後に、表にまとめましたので、ご参考ください。

手球 入射時手球 反射時 先球 備考
先球 or クッションファースト撞点スピード (時速 km/h)入射角 スピード (時速 km/h)反射角スピード (時速 km/h)
動画1先球 (クッションとほぼ同時)順下11.2505.865(後方反射)7.7 先球安定と推測
動画2クッション自然回転8.6505.090(垂直反射)5.0先球不安定の可能性有
動画3クッション (先球とほぼ同時)自然回転5.1502.860(前方反射)2.9先球不安定の可能性有

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