ひねり量 タップのRとシャフト径には関係性が

タップにRをつけるほど(タップに曲率をつけるほど)、ひねりが乗る(手球のスピン量が増す)ことは経験的に知られてますが、それはなぜでしょうか?またひねり量においてタップのRとシャフト径には関係性があります。更にタップのRとトビについて考察します。

結論

・タップにRをつけるほど、タップと手球が接触可能な距離が増す為、手球のスピン量が増加する

・シャフト径の大小で比較した場合、同じRであっても、シャフト径が大きい方がスピンが乗りやすい

・タップにRをつけるほど、手球のトビが減少する。

詳細

タップにRをつける時皆さまは何を意識されているでしょうか?

あまりよくわからないが、経験的に好みのRをつけている方も多いのではないでしょうか?

Rの形状はちょうど10円玉の形状がいいとか、100円玉の形状がいいとか、色々あるかと思います。

また経験的にタップにRをつけるほど、手球にスピンが乗りやすいことを知っているかとも思いますが、それはなぜでしょうか?

ここではタップの形状の点のみから、タップのRと手球へのスピン量の関係を見ていきます。(=タップの材質、弾力性、摩擦、シャフトの性能等、タップのR以外の他の機能については考慮してません)

先ず下図をご覧ください。

(a)はタップの中心が手球の中心にあるときの様子です。次に(a)の状態から手球がタップのRの曲面に接触しながら、可能な限り動ける範囲を表した図が(b)です。この時、手球がタップ上を移動可能な距離はタップ表面の赤い曲線になります((b)のタップ表面上の赤い曲線)。

さてこのタップ上の赤い曲線は、タップのRの違いによって異なることが分かります(下図)。

上図の(c)と(d)を比較した場合、タップの曲率の高い(d)の方が、タップの曲率の低い(c)よりも、赤い曲線が長いことが分かります。

以上のことは、タップが手球に接触してから手球がタップから離れるまでの時間に、手球がタップに接触できる距離(実際は面積)の物理的な最大値を表してます。

現実的に、手球の中心を撞いて、そこから手球がタップの表面をなぞるような動きでスピンをかけにいくことは、キューをはねるような(さばくような)撞き方をしたとしても難しいでしょうが、キューを平行に入れた場合であっても、局所的には、タップのRの曲率が高い方が、手球がタップに接触できる距離が長いことが理解できるかと思います。

さて、もう少し進めていくと、冒頭で、タップのRの付け方は丁度コインの曲率と同じようにすることが経験的に行われますが、タップのRとコインの関係図は以下の様です。

図)タップのRとコインの大きさの関係

左から右に行くにつれ、タップのRの曲率が高くなっていきますが、丁度コインと重ね合わせますと、左から右に行くにつれ、コインの直径が小さくなっていくことが分かります。

そうすると、円と三角関数の関係から、以下の様なグラフが得られます。ここでは結果のグラフのみ示しますが、計算過程に興味がある方は文末を参照ください。

図) 横軸はコイン及びシャフト径の直径(mm)、縦軸は手球がタップ表面上に接触可能な距離(mm)を表してます(=上述のタップ表面上の赤い曲線の距離)。

図に示しますように、コインの直径が小さくなるほど、手球がタップ表面上に接触可能な距離は大きくなっていくことが分かります。距離が最大になるのは、タップのRがシャフト径と一致する時で、物理的にはこれが最大値になります(上図:「タップのRとコインの大きさの関係」の右側のような状態。タップのRとシャフト径が一致している)。

ちなみに、上手のシャフト径はイグナイトシャフトの12.2mm径に基づいて計算したものです。

他のシャフトを使った際、「手球がタップ表面上に接触可能な距離」は変わってくるものでしょうか?

下図をご覧ください。

レボのシャフト径12.9mmとイグナイトのシャフト径12.2mmを比較した場合、同じコインのRをつけた場合、レボの方が「手球がタップ表面上に接触可能な距離」は大きくなっていることが分かります。例えば、横軸の1円の場合のRを見てください。オレンジ色はレボで、水色はイグナイトですが、オレンジ色(レボ)の方の値が高くなってます。

このことから、例えば、シャフトを新調してシャフト径が小さくなった場合、新調前と同等のRをつけたい際には、Rの曲率は高めにしなければならないことが分かります。逆に、新調時にシャフト径が大きくなった場合、Rの曲率は、新調前よりも低くしてもいいと思います。

また前回記事の、ひねりと、トビの関係で、ひねりが乗らないと球がとぶことを述べました。

キューから手球に加えられるエネルギーは、手玉の中心に向かう力と、手玉の接線成分の力(=ひねり)に分けることができます。ここで、キューから手球に伝えるエネルギー量が一定の場合、ひねり量が少なくなるほど、その分のエネルギーは手玉の中心に向かう力の方へ増えますので、結果とびがでます。

タップで有名なカムイから「トビ発生のメカニズム」の記事が掲載されてます。こちらもご参照ください。

ところで、タップのRの曲率を増やして手球を撞いた際、打感が軽く感じた経験はありませんか?

これは手球を撞いた際のエネルギーが、手球のスピン量に流れ、その分、手玉中心方向のエネルギーが減少したことにより感じ取れる打感(=トビ方向の力が減った)と思われます。スピン量が増えると手玉進行方向のパワーが減ると捉えることもできます。

よって手球のトビを減らしたいなら、タップのRの曲率を高くしてひねり量を増えるようにするといいと思います。またスピンが増した分、撞点を中心に寄せるように撞く工夫も有効かと思います。

一方、Rの曲率を高くする欠点は、手球のコントロールが難しくなることと、カーブが出やすくなることでしょう。ちょっとした撞点のミスが、如実にスピンとなって手玉に現れたり、キューが斜めに入ることによるカーブが発生しやすいなど。

よってタップのRの曲率を高めた際は、キューはより水平にしてストロークすることが望ましいと思われます

プレイヤーが何かを意図して球を撞きに行く場合、プレイヤーの情報を手球に伝えることができるのは、タップと手球が接する一瞬の時間帯であり、物理的に接触できるのはタップと手球の距離(面積)です。

実際、手球にスピンが乗る要素は、今回考察したタップ表面上の距離のみならず、タップの弾性、シャフトの性能(キューの性能)など、摩擦、接触時間等の様々な要因が重なり合ってきます。こられの要素をすべて含めて考察することは、難しいので、今回はタップのRのみの着目しました。

タップ調整の際、ご参考ください^^

参考)タップ表面上の距離(赤い線)の計算方法

L: タップが手球に接触可能な距離、rs: シャフトの半径、rc: コインの半径、Θ:「 コインの全円周」に対する「タップが手玉に接触可能な距離」を角度比で表したもの(=コインの全円周:タップが手玉に接触可能な距離 = 360:Θ)

① 赤い線(L)= 円周(2 x π x rc)x Θ / 360°

② sinΘ = rs / rc

③ Θ = sin-1 rs / rc (逆三角関数の公式)

rs に実際のシャフト半径、rc にコイン半径を代入して②を求め、②から計算機を用いて③の値を求め、①に代入することで、グラフを作成した。

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